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山梨県から来た車 [アスンシオン点描]

前回述べたように、パラグアイにはたくさんの日本車が走っていますが、それらは正規の代理店を通して販売されたもの(及びその中古車)と、もともと日本から中古車として輸送されてきた車とに分けられます。まずは正規代理店を通して、新車としてパラグアイで売買される日本車の例をご紹介します。

南米パラグアイにも、世界の有名自動車メーカーの販売店がありますが、中でもトヨタは日系の優良企業が正規代理店になっていて、時おり大通り沿いなどで、立派なショールームを備えたトヨタの販売店を目にします。写真下は、現在パラグアイで売り出し中?の、スズキのスイフト。日本ではサッカーの稲本選手のCMでおなじみですね。左はショッピングセンターの駐車場に掲げられていた看板で、右はアスンシオンのセントロ(市の中心部)近くに停車していたピカピカのスイフトです。パラグアイは右側通行なので、もちろんこれは左ハンドル仕様のスイフト。シートのビニールカバーもかかったままで、まさに新品同様といった様子でした。パラグアイの新車事情については、買った経験がないので何ともご説明できませんが、アスンシオンの日本人学校に赴任されてきた先生方などは、正規代理店経由で購入されたと思しき、左ハンドルの日本車(トヨタのRAV4やランドクルーザー・プラドなど)を愛用されているようです。

 

 

そしてもう一つが、日本から中古車として輸送されてくる車です。貨物船に載せられ、日本の港を出た中古車は、チリ北部のイキケという港町で降ろされます。しかし、残念ながらこれらの日本車、このまま乗ることはできません。そう、南米ではほとんどの国が右側通行ですから、ここでハンドルを右から左に付け替えるという荒療治が必要になるわけです。そして、パラグアイの中古車バイヤーによって買い取られた車は、南米大陸のほぼ中央に位置するパラグアイ目指してアンデス山脈を越え、3000km以上もの道のりをひた走って、この地へ運ばれるのだと聞きました。こちらで何喰わぬ顔をして走っている中古日本車も、太平洋を渡り、アンデスの山並みを越えてきたのかと思うと、それだけで何だか愛おしく見えてくるというものです。なお、これだけの手間暇がかかっても、正規輸入の日本車よりは格安なのでしょう、パラグアイにある日本の車の多くが、この改造タイプの中古車ではないかと思われます。

なお、ダンナによると、正規輸入車と、中古車として輸入された日本車は、ワイパーの向き(右ハンドルと左ハンドルでは、ついている向きが逆)や、日本のRV車などにつけられている補助ミラーの有無などによって見分けることができるのだとか。つまり、左ハンドルに改造されていても、ワイパーの向きが左ハンドル用に直されていなかったり、補助ミラーが左のフロントフェンダーについたままになっている場合、これは日本から輸入されてきた中古車だと判別できるというのです。また、海外仕様車は、日本での呼び名とは違う名称がつけられるケースが多いらしく、写真下のトヨタ・ハイラックスサーフは北米などでは“4Runner”名義で、三菱のパジェロは北南米では“Montero”の名前で販売されており(イギリスでは“Shogun”というらしい)、もしパラグアイでパジェロのエンブレムをつけたまま走っている車があれば、これも日本から中古車としてやって来た車だということになるわけです。


輸入中古車の良い例が、写真上のトヨタ・ハイラックスサーフ(92年式)。これはウチのマイカー・・・、ではなくてダンナの社用車です。社用車と言うと、黒塗りの高級車などを思い浮かべるかもしれませんが、調査機械を積んで地方の現場へ行く都合上、このような4WD車となりました。海外で車を購入するとなったら、そりゃ誰だって、「日本ではなかなか買えないような車がいいな」と思いますよね? 私も「これは滅多にないチャンスだ」と考え、日本でお洒落なTVCMを目にしていたプジョーかルノーにしようとダンナに提案してみたところ、「そんな予算、ないから・・・(怒)」と、残念ながら即座に却下されてしまいました。(ちなみにダンナは、前回写真を載せたワーゲンバスにしたかったそうです。ワーゲンバスなら、まだこっちで良かったかな・・・)

この車も南米で右ハンドルから左ハンドルに改造された、いわゆる“パチモノ左ハンドル”ではあるものの、ダッシュボード周りもそこそこキレイで、素人目にはとてもムリヤリ付け替えたようには見えません(車に詳しい人が見たら、たぶん一目で分かると思いますケド)。私は運転免許はおろか、生まれてこの方マイカーというものにまったく縁がなかったため、車といえば当然右ハンドルのレンタカー程度しか乗ったことがありませんでした。ところがパラグアイでは左ハンドルですから、助手席に乗るつもりで間違えて運転席側に回ってしまい、ダンナに毎度「アンタ、そっちじゃないよ」と注意される始末。ま、そういうダンナはダンナで、思い出すのは去年一時帰国した際、レンタカーで北海道を回ったときのこと。他にほとんど車の通らない対面通行の道路を走行中、「ああっ!」といきなり大声をあげたかと思うと、「やべっ! 今までずっと、右側逆走してた!」と言いながら、慌てて左側に車線変更していたことがありました。助手席に座っていながら気づかない私もどうかと思いますけど、まったく“慣れ”というのはオソロシイものです。

ちなみに上の写真の車、ワイパーの向きは左ハンドル用に直されていますが、補助ミラーは元の位置についたまま。街でときどきすれ違う“4Runner”は、一応同じ車ではあれど、向こうは初めから左ハンドルで作られた正規輸入品。「こっちはパチモノか・・・」と思うと、そこはかとない敗北感が漂ってきます。なおこのハイラックスサーフ、クーラーは壊れて作動せず、走行距離はすでに10万kmを超えています。パラグアイには中古車販売店がたくさんありますが、ダンナは仕事先の知人を通して、所有者から直接購入したそうで、お値段は5000ドル(日本円で約60万円)だったとのことです。

そして、日本の中古車である何よりの証拠が、リアウィンドウに貼られたこのシール・・・


山梨県龍王町の車庫証明です!

日本車は中古でもやはり人気があるようで、この車、実はもう次の所有者が決まっています。どうも相当前からこのハイラックスサーフに目をつけていたらしいカルロスさん(ダンナの以前の仕事仲間)が、早々に「日本に帰る際、譲ってくれよ」と申し出てくれたというのです。その後、ダンナの帰国が予定より遅れていることもあり、カルロスさんから度々、「オレの車、大丈夫だよな? 他に売ったりしてないよな?」と電話で念を押されるとのこと。首を長くして待っていてくれる人がいるのですから、こんな有難い話はないですね。パラグアイでは、車はボロボロになるまで乗るのが常識?のようなので、この車も、少なくともあと10年以上は現役で活躍することと思います。山梨県龍王町(現・甲斐市)でその昔、赤いハイラックスサーフに乗っていたアナタ! あなたのかつての愛車は、地球の反対側パラグアイで、今も元気に頑張っています。


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