SSブログ

パラグアイの国立美術館 [アスンシオン点描]

パラグアイでの滞在も残り一週間を切った今頃になり、パラグアイのいわゆる観光名所についてほとんど何も書いていなかったことに気づいたので、今日は数ある?名所のうち、セントロにあるパラグアイの国立美術館を訪ねてみました(写真下)。ふらっと入ってはみたものの、1階の右側は図書室で、展示室は1階の左手と、2階の右手・左手の計3つ。1階では企画展なのか現代美術の展示が行われ、2階にはヨーロッパ絵画らしき肖像画や風景画がかけてありましたが、内部は撮影禁止になっていて、知っている画家の作品も見当たらなかったため、特にメモも取らずに出てきてしまいました。館内は入場無料で受付もなく、また、監視員らしき人もほとんどおらず、何だか警備の甘さばかりが目についた美術館でした。

「ま、これといって盗られるモノもないってことか」と思いながら建物を出ようとしたとき、入口脇の掲示板に貼られたポスター(写真下)に、ふと目が止まりました。「インターポール(国際刑事警察機構)が探している美術品」とあるので、どこで何が盗まれたのかと思って見てみたところ、このポスターの右上にある絵画、“NCB:ASUNCION”となっており、盗まれた場所は“Museum”と書かれているではないですか。ホテルに帰って調べてみたところ、“NCB”とはインターポールの国家中央事務局(加盟国各国の窓口に当たるもの)の所在都市名を表しているとのこと。つまりこの作品は2002年7月29日、パラグアイ国内の美術館から盗まれたものだというのです。

 
(写真左・右ともに、インターポールのHPから拝借した、2002年12月版のポスターの画像。「インターポールが今いちばん探している6点」というわけではなく、こういった盗難事件が起こるたび、新たなポスターが発行されている模様です。なお、ポスターの左上に載っているのは、オランダで2002年12月に盗まれたゴッホの風景画。“RECOVERED”のマークがついているのはスウェーデンで同年11月に盗まれたシャガールの作品で、こちらは翌年1月に無事持ち主の手元に戻ったようです。)

パラグアイには、今は博物館となった旧国会議事堂をはじめ、アスンシオン市の歴史博物館や先住民アートの美術館など、いわゆる“Museum”と呼ばれるものがいくつもあります。果たしてどこの美術館から盗まれたのか、インターネットであれこれ検索してみたところ、盗難に遭った美術館は、やはり今日私が訊ねた、そしてインターポールのポスターが入口に寂しく貼ってあった、あの国立美術館であることが判明したのです。

パラグアイで国立美術館がオープンしたのは1909年。以来、館内ではスペイン人画家ムリーリョやルシニョール、イタリアの画家ティントレット、ファヴレット、チアルディなどの作品が展示されていたそうで、2000年頃に出版された『地球の歩き方』には、「規模は小さいがコレクションのレベルが高い」と書かれています。ところが今を遡ること約5年前の2002年7月29日、そのコレクションの中で最も貴重な5作品(十数点としている資料もあり)が、強盗団によって持ち去られたというのです。盗まれたのは、あのインターポールのポスターに出ていたムリーリョの聖母子像の他、クールベの風景画、ティントレットの自画像などで、資料によると「被害総額は100万ドルを優に超える」とのことでした。

盗難の通報を受けた警察は、道路を挟んだ向かいにある空き店舗内で、シャベルとツルハシを発見。ほどなくして、この建物の地下から約25メートル先にある美術館へと伸びる、木の杭で補強された地下トンネルの存在が明らかになりました。つまり、犯行グループは身元を偽ってこの空き店舗を借り、2ヶ月かけて美術館へと通じるトンネルを掘り、そしてついに誰にも気づかれることなく、まんまとお目当ての絵画を盗み出したという訳なのです。トンネルを掘って盗むだなんて、シャーロック・ホームズの『赤毛連盟』じゃあるまいし、どれだけ時代錯誤なことをやっているのかと思われるかもしれませんが、1年ほど前だったでしょうか、パラグアイでも銀行までトンネルを掘った強盗団がいたり、2005年にはブラジルでやはり同様の手口により、銀行から75億円もの大金が盗まれたりしているのですから、まだまだこの“トンネル作戦”は、南米では王道を行く強盗手段であるようです。

上のポスターに盗難絵画が掲載されている画家ムリーリョ、調べてみたら『大辞林』や『大辞泉』にもしっかり載っていました。「ベラスケスと並ぶスペインバロックの代表的画家」だそうで、上のポスターにあるような、やさしいタッチの聖母子像などが有名なのだとか。この盗難に関して国立美術館の担当者曰く、「不況の影響で、警備のための充分な予算が取れなかった」。どんな経緯でパラグアイの国立美術館が所持するようになったかは不明ですが、そんなお宝を持っていたのなら、いつまでも大事に守り続けて欲しかったですね(写真上は、国立美術館の全体像。こんな無防備な建物では残念ながら、遅かれ早かれ何か盗まれたに違いないと思います)。名画は盗まれるわ、刷り立ての新札は盗まれるわで、踏んだり蹴ったりのパラグアイ政府・・・。上のポスターの絵について何か情報をお持ちの方は、どうぞ最寄りの警察署までご連絡ください。


nice!(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 0

寒波到来パラグアイ車事情 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。